熱中症から身を守る空調服®とフルハーネスおよび高所作業の相性と併用の危険とは?

ひらの

高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し安全対策のご提案をしています。
この記事では昨今多くの現場で活用されている「空調服®とフルハーネスおよび高所作業の相性」についてまとめてみました!
ぜひご参考にしていただければと思います。

ここ数年では夏場の作業着として定着してきた「空調服」ですが、実は過去に「高所作業には向いていないのではないか?」という指摘があったことをご存じでしょうか?

事実として、フルハーネスなどの製造をしているスリーエムジャパン・コーポレートコミュニケーション部の調査では、空調服®内部からランヤードを差し込む空調服®は、作業者が落下した際に首が締まったり、ショックアブソーバーが機能しないという指摘をしています。

ただし、この可能性が指摘されたのは法令等によるフルハーネス義務化が決定した2019年当時のものであり、現在ではフルハーネス対応型の空調服®も多く販売されていますのでご安心ください!

それでは以下に詳しくご説明いたします。

目次

空調服®とフルハーネスの併用は危険なの?

フルハーネスと空調服の作業者

そもそも、従来の空調服®の構造は外気を取り入れるファンをバッテリーで稼働させることで、汗を気化して熱から冷却効果を得ることを目的に製作されてきたという経緯があります。

また、袖口や襟元から排気することで、服の内側にこもった熱を逃がし、熱中症の対策とするものでもありました。

一方、フルハーネスを着用した場合、2019年当時の主流であった構造では、主にフルハーネスを内側に着用して外側に空調服®を着用する設計がほとんどでした。

つまり、背中の開口部分などからランヤードを取り出すタイプのものが多かったことから、フルハーネスと空調服®の併用は危険だという論調になってしまったと思われます。

さらに、空調服®は配線類などの問題から、ショックアブソーバーが正しく展開されないことも危惧されていました。

だからといって、フルハーネス着用義務化において空調服®が禁止されるというようなことはありません。

真夏の作業においては熱中症による「めまい」や「ふらつき」が装備品や工具の落下、滑落などの原因となるため、墜落制止用器具の安全な使用と併せて、熱中症予防が大切だからです。

そこで、近年多く登場しているのが、「空調服®の上からフルハーネス着用可能」なタイプのものです。

従来懸念されていた問題は、服の内部からランヤード等が接続されることを前提にしたものですが、空調服®メーカーもこれらの指摘を考慮して、空調服®を先に着込んでからフルハーネスを着用できる形状の製品を多く販売しています。

実際に、フルハーネス着用義務化に向けて、厚生労働省にて2016年~2017年に実施された「墜落防止用の個人用保護具に関する規制のあり方に関する検討会」においても、熱中症予防のための空調服®との併用についての議論がなされており、報告書概要にも作業性の確保等の要件の中で「空調服や絶縁用保護具が着用可能なフルハーネス型の普及に努めるべき。」との記載があります。

つまり、厚生労働省としても高所安全対策としてのフルハーネス着用と熱中症予防としての空調服®着用について、どちらも重要事項として推進していきたいという考えが見て取れます。

作業員の安全確保には外側からのハーネス対応がおすすめ

フルハーネスと空調服の作業者

フルハーネスが義務化されている高所作業においては、空調服®そのものの構造によって、落下物を発生させてしまう危険性があります。

ファンやバッテリーの落下はもちろん、内側から出したランヤード等が外側の器具や作業用品などにかかると、作業事故のリスクが増加してしまいます。

もっとも外部から接続できる形状であれば、空調服®自体が墜落制止用器具に干渉を起こす可能性を減らせます。

もちろん、正規品として販売されているハーネス対応型に問題があるという訳ではないですが、フルハーネスの種類やランヤードの導線などによっては、ハーネス対応の空調服®であってもお互いが干渉しあってしまう可能性があるので、ご自身の使用する工具や実際に作業する現場の状況を考慮し、ハーネス対応の空調服®を選定する必要があります。

2024年8月現在、ハーネス対応の空調服®は非常に種類が豊富ですので、自分に合ったものがきっと見つかるかと思います。

フルハーネス非対応の空調服®は絶対に使用しない

空調作業服を来て点検をする作業員

逆に、フルハーネス着用が必要な作業現場において、フルハーネスに対応していないモデルの空調服®にハーネスを取り付けて作業をしている、ということはないでしょうか?

フルハーネス完全義務化の本格移行からはまだ期間が短く、今後も暑さ対策、熱中症対策の軸として作業現場では空調服®が主流になると予測されていますが、フルハーネスが必要な作業現場においては、非対応品の空調服®とフルハーネスを同時に併用することだけは絶対に避けるべきです。

万が一、空調服®とフルハーネスが干渉してしまい、ランヤードやショックアブソーバーといった「落下時のショックを軽減させる装置」が正しく作動しない場合、もはやそれはフルハーネスを装着していないのと同じだと言っても過言ではないからです。

もちろん、平地においてはフルハーネスに対応している必要がありませんが、高所作業における空調服®は必ずフルハーネスに対応した正規品を使用するように心がける必要があります。

まとめ

暑さの過酷な9月の終盤までは、作業現場などでよく使用される空調服®ですが、フルハーネスと併用するためには、いくつかの点を考慮した上で正しく着用をする必要があります。

また、いくら優れた空調服®であっても、発汗を抑制してしまう状態になると冷却機能は半減してしまい、根本的な熱中症の対策にはなりません。

空調服®を着ているから大丈夫、ではなく「空調服®を着用しながらも適切な水分補給」をするからこそ、熱中症対策としての機能が保たれます。

暑さの具合にもよりますが、空調服®の下に着込むインナー類を予め水に濡らしておいて、絞ってから着用したり、冷却ミストの併用などで空調服®の効果を上げるといったような工夫もできます。

また、着用時の相性についてはフルハーネスを製造・販売しているメーカー等がもっとも把握しているというケースもあるため、事前に空調服®とフルハーネスの相性を確認しておくと、安心して作業にあたることができるでしょう。

作業現場を監督される方々においては、作業員に着用時の違和感や動きに支障が起きていないかをこまめにチェックし、声掛け確認等によってさらに安全な現場作りをして頂ければと思います。

空調服を来てあるく作業員

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