日本における労働災害及び
墜落・転落事故の現状
厚生労働省では、労働災害発生状況を毎月集計し、集計結果を公表しています。
最新の令和5年のデータを見てみると、毎年多くの事故が起きているなかで、高所からの墜落・転落に関する事故が占める割合は非常に大きく、死亡者数は交通事故よりも多い最多の204人(前年の234人から30人減少)、全体の27%を占めています。また、休業4日以上の死傷者数においても【転倒】【動作の反動・無理な動作】に次いで3番目に多い20,758人となっており、全体の15.3%にのぼります。
労働災害による死亡者数は年々減少傾向にありますが、一方で休業4日以上の死傷者数は増加傾向にあります。
日本でもようやく始まった
高所安全対策への法整備
上述のように、日本では毎年200人を超える方が高所作業中に墜落や転倒が原因で命を落としており、負傷者を含めるとその数は2万人を超えています。
日本ではこれまで胴ベルト型とハーネス型の安全帯が用いられてきましたが、いよいよその安全性が見直しされはじめています。
具体的には労働安全衛生法施行令と労働安全衛生規則の一部改正により、安全対策の強化が図られました。
先行する欧米の規格を取り入れ、今後ますます日本の高所安全対策は強化されていくものと思われます。
フルハーネス型墜落制止用器具の着用義務化
日本では労働安全衛生法施行令と労働安全衛生規則の一部改正により、安全対策の強化としてフルハーネス型墜落制止用器具の着用が2019年2月1日から義務化されました。
これに伴い、呼称も安全帯から「墜落制止用器具」へと変更されています。
フルハーネス型墜落制止用器具においては新規格が制定され、同年8月からは旧規格品の製造が禁止されています。
これにより欧米ではスタンダードであるフルハーネス型墜落制止用器具が、日本でも一定の高さ*において着用を義務づけられることとなりました。
さらに2022年1月に完全施行となり、旧規格品の販売・着用が禁止となり、実質的な新規格フルハーネスの着用義務化が始まりました。
* 高さ6.75m以上の高所(建設業では5m以上で推奨)
また、高さが2m以上の箇所で、作業床を設けることが困難な場所において、フルハーネス型の墜落制止用器具を用いて作業にあたる場合は、予め安全衛生特別教育を受けることが必須となりました。作業者自身が正しい知識で正しく器具を使用することで、高所作業時の事故を未然に防ぐことが期待されます。
高所安全対策は
“2つのポイント”に分けて考える
レストレイントシステムとフォールアレストシステム
高所安全対策は2つのポイントに分けて考える必要があります。
1つはそもそも落ちないための対策(レストレイントシステム)。
そしてもう1つは万が一落ちてしまった時に命を守る対策(フォールアレストシステム)です。
厚生労働省の個人用保護システムの分類例ではそれぞれのシステムを下記のように表しています。
レストレイントシステム
- 墜落の危険がある箇所へ接近しないよう、作業者の移動範囲を制限するための機構
- 安衛則の命綱が含まれる
フォールアレストシステム
- 地面への激突を防ぐため、墜落する作業者を補足し墜落距離を制限するための機構
- 一本つり状態で安全帯を使用する場合が含まれる
フルーハーネスの着用を義務化するということは、まさしく上記のフォールアレストシステムにあたります。
万が一、屋根から足を滑らせてしまった時・・・足場から転落してしまった時・・・天窓を踏み抜いてしまった時・・・地面等への激突を防ぐための機構であり対策です。
では、”そもそも落ちない”ための機構、対策についてはどうなっているのでしょうか。
日本には
“レストレイントシステムに
対応する規格”がまだない
実は今現在、日本には”落ちないための対策(レストレイントシステム)”に対する規格がありません。
極端なことを言うと、法律を遵守しフルハーネス型墜落制止用器具を着用したはいいけど、肝心のフックをかける先がない!という事態に陥る可能性が大いにあるのです。
実際に弊社へ高所安全対策をご相談頂いた会社様の中に、フルハーネスを着用してはいるもののランヤードフックをどこにもかけずに屋根上での作業を行っていたという会社様がおられました。
でもどうしようもなかったのです。
フルハーネスは買えばすぐに着用ができます。でも、建物側にフックをかける先がないのですから。
墜落・転落そのものを防ぐ環境を整える必要がある!
日本の産業施設の屋上の安全対策といえば柵を設ける程度で、包括的な安全対策を設けているところは大変少ないのが実情です。
屋根上での作業には室外機・ダクト・ソーラーパネル・避雷針・看板・屋上緑化など定期的な点検やメンテナンスにより高所作業が必要とされる機会がたくさんあります。
そのような高所作業場において、
- 天窓などの危険箇所に接近させない ➔ 踏み抜きによる墜落・転落を防止
- 屋根の軒先に接近させない ➔ 屋根の外周部からの墜落・転落を防止
このような機構を設けることは、墜落・転落を防ぐためにとても有効な手段です。
また、高所へのアクセスによく使われる固定はしご(タラップ)昇降時の安全対策や、見落とされがちな車両上での作業時の安全対策なども墜落・転落事故を防ぐために必須です。
労働災害を防止し、従業員や外注先の方の大切な命を守るために、墜落・転落そのものを防ぐ環境づくりに目を向けてみてください。
高所安全対策を
“常設する”ことの必要性
墜落・転落そのものを防ぐ環境をつくるために必要なことはたくさんあります。
数ある手段の中のひとつとして、弊社では高所安全対策の常設化がとても有用であると考えます。
ところが多くの会社様にヒアリングを行ったところ、現在の日本の高所安全対策のスタンダードは仮設用途であることがわかりました。
工事期間だけ安全対策を取るための仮設の親綱。これが日本における現在の高所安全対策のスタンダードです。
中には工事期間であるにもかかわらず安全対策を取らない → 事故発生という事例も散見されます。こういうケースは事故が起きれば公に知り得るものとなりますが、事故が起きないとなかなか表には出てこないものです。
では工事期間が完了した後、定期点検やメンテナンスを行う際の安全対策はどうでしょうか。
定期点検やメンテナンスに十分な予算を採るのは難しいところです。点検の都度、しっかりと仮設の安全対策を施していますでしょうか。フックをかける先がない屋上を人が丸腰で歩いていないでしょうか。
費用の問題、時間の問題、ちょっとくらいなら大丈夫・・・という心、墜落・転落事故はそんな時に起こるのです。
“高所安全対策が必要な
シーン”は意外と多い
御社の所有する建物の屋上や高所では下記のような点検を実施していませんか?
- 室外機やダクトの点検
- 避雷針の点検
- 太陽光パネルの点検
- ビル屋上の携帯基地局の点検
- 屋上看板の点検
- ビルメンテナンスゴンドラの点検
- 屋上緑化、壁面緑化のメンテナンス
- 貨物車、鉄道のメンテナンス
- フロン排出抑制法に沿った定期点検
- 屋根の水漏れ点検
このような定期的な点検を行うにあたり、”屋根に安全に登る・屋根上で安全に移動する”ための設備がないケースが多く、計画通りに点検することができないというお声を多くいただいております。
点検の都度、仮設の安全対策を講じるのは費用的にも時間的にも負担が大きく、昨今の労働安全意識の高まりから、自社の社員で対応する代わりに、外部の専門業者に高額な費用を支払って委託する会社様も増えています。
高所安全対策を常設化することによって、定期的な点検やメンテナンスにかかる費用を抑えながら内製化し、それでいて安心安全な高所作業環境をつくることが可能です。
世界基準の高所安全対策で
日本の作業現場に安全と安心を
欧米を中心に世界では高所安全対策を「常設」することが一般的に普及しており、墜落・転落防止(レストレイント)システム自体の国際規格も存在します。
一方、日本では同様の規格がまだ定められておりません。そこで私たちは、日本に適した墜落・転落防止システムを様々検討し、シンガポールにあるアクロバット社の転落防止システムを普及する事業に取り組むことといたしました。
アクロバット社は東南アジアでNo.1のシェアを誇り、シンガポールを中心に700件以上の施工実績があります。代表的な例ではシンガポールのランドマーク(象徴建築物)である「チャンギ国際空港」「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」、マーライオンのバックで有名な「マリーナベイ・サンズ」などに設置しています。
日本国内でも2020年の販売開始以降、大手企業様、官公庁を中心に着々と導入実績を伸ばしています。 ⇨ 設置事例の一例
国際規格に準拠した安全性はもちろんのこと、多様な屋根形状に対応が可能で、施工期間が短く、設置後にも建物や周囲の景観を損なわないデザイン性の高さも好評です。
日本でこれからますます普及していく世界基準の高所安全対策の常設化を実現するため、我々は高所安全対策の普及に力を入れていきます。
高所作業時の事故を「ゼロ」に!
繰り返しになりますが、もはや常設型の墜落・転落防止対策はすでに世界基準ではスタンダードです。
そして、万全の安全対策を施し従業員・作業員の命を守ることは会社の使命であり、社会全体で実現すべき課題でもあります。
日本特有の職人気質は素晴らしいものですが、命がとても尊く儚いものであることもまた事実。高所作業時の事故をなくすためには、命を守るための現場環境をシステムとしてつくっていくことが必要なのです。
今あなたが抱えている課題をお聞かせください。豊富な実績をもとに、あらゆるシーンに対応した墜落・転落を防ぐ環境づくりをご提案いたします。
近い将来に必ず高所作業時の事故を「ゼロ」にする。それが我々の願いであり、使命だと考えています。