安全衛生経費の意味と考え方を紹介!適切な確保の方法は?

ひらの

高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し高所安全対策のご提案をしています。
このコラムでは「安全衛生経費」に焦点を当てて意味と考え方について考察してみました。
経費削減は重要である一方で、必要な経費はかけていかなければならないのも事実です。
あなた自身のお考えに対するセカンドオピニオンとして、ぜひご参考にしていただければと思います。

建築や建設の現場では、安全衛生への意識が年々高まっています。

特に大手企業や官公庁発注の工事では、安全衛生経費を適切に確保し、労働災害防止に取り組むことが強く求められるようになりました。

しかし、安全衛生経費とは何か、どのように確保すればよいか、正確に理解できていない方も少なくありません。

この記事では、安全衛生経費の意味と考え方を整理した上で、建設業法やガイドラインに基づく適切な確保の方法をわかりやすく解説します。

目次

安全衛生経費とは

安全衛生経費とは、労働者の安全と健康を守るために必要な労働災害防止対策にかかる費用を指します。

労働安全衛生法に基づき、事業者には労働災害を防止する義務があり、そのための設備や管理体制、教育訓練などに要するコストが安全衛生経費にあたります。

直接工事費と間接工事費

COSTのイメージ

安全衛生経費は、大きく分けて直接工事費と間接工事費に分類されます。

直接工事費に含まれるもの

施工時に必要な安全設備など、作業現場に直接関わる費用が該当します。

  • 足場
  • 支保工(仮説の構造物)
  • 作業構台の設置
  • 安全ネットの設置

間接工事費に含まれるもの

間接工事費は作業全体を支える管理費用で、さらに共通仮設費と現場管理費に分かれます。

共通仮設費バリケード設置
作業指揮者や連絡員の配置
フルハーネスやヘルメットなどの保護具
消火器設置
換気設備整備
現場管理費労働者への健康診断費用
特別教育・技能講習の実施
救護・避難訓練の実施費用

労働災害防止対策の義務を負うのは誰か

虫眼鏡と対策の文字

建築現場では、元請負人・下請負人など複数の事業者が関与することが一般的です。

この場合、労働災害防止対策の義務は元請負人にも下請負人どちらにも存在します。

特に元請負人には現場全体の安全を統括する責任があり、危険防止措置の実施や、災害発生時の初動対応体制の整備が強く求められます。

下請負人についても、自社の作業に対して独自に労働災害防止対策を講じる義務があります。

つまり、「作業を下請けに出したから安全管理の責任がない」という考え方は通用しません。

安全衛生経費を確保するための正しい手順

問題提起をするスーツの男性イメージ

労働災害防止対策のために必要な安全衛生経費は、大小関わらずどんな企業も適切に確保しなければなりません。

ここでは建設業法や、建設業法令順守ガイドラインに則る経費確保の正しい手順を解説します。

労働災害防止対策の内容と負担者の明確化

まず、元請負人は現場ごとに必要な労働災害防止対策を整理し、どの作業に、どのような対策が必要かを具体化します。

その上で、各対策の実施者(元請・下請)と経費負担者を明確に定めることが重要です。

例)高所作業車の使用、安全ネット設置、作業主任者の配置など

対策内容を曖昧にしたまま契約交渉に進むと、経費負担や責任の所在が不明確になりトラブルの原因となります。

安全衛生経費の別途明示と積算

安全衛生対策に必要な経費は、工事費とは別途、内訳を明示して積算することが求められます。

よくある「諸経費に含む」「一式」といった形では不適切です。

下請負人に見積もりを依頼する際には、安全衛生対策ごとの費用と対応する具体的な施策内容をできるだけ明確に記載してもらう必要があります。

対等な立場での契約交渉の実施

建設業法第18条では、元請負人と下請負人が対等な立場で契約交渉を行うことが義務付けられています。

労働災害防止対策に必要な経費についても適切な見積もりを尊重し、不当に削減を求めたり、負担を一方的に押し付けたりしてはなりません。

下請負人側も、必要な安全衛生経費を明確に主張し、正当な交渉を行うことが求められます。

契約書への明記

工事請負契約書には、安全衛生対策の内容・実施者・負担者を明確に記載する必要があります。

また、安全衛生経費については、施工に必要な直接工事費とは区別し、内訳として別記するのが適切な方法とされています。

こうすることで後々の支払いトラブルや義務不履行のリスクを防ぐことができます。

支払い時の適正な対応

契約に基づいて安全衛生経費を支払う際には、次のような基本ルールを厳守することが求められます。

  • 赤伝処理(減額修正)を行う場合には、必ず双方の合意を得る
  • 保護具や資材を一方的に支給して費用を差し引く行為は禁止
  • 合意なく振込手数料などを下請負人に負担させることも禁止

これらのルールは、一次下請だけでなく、二次下請や三次下請といったすべての下請契約にも適用されます。

下請構造が複雑な場合でも、すべての労働者の安全確保に向けた経費が適切に支払われるよう誠実な対応が求められます。

まとめ

安全衛生経費は、建築・建設現場における労働災害を防止し、労働者の命と健康を守るために不可欠な費用です。

適切な経費の確保と運用は事業者にとって社会的責任であり、現場の安全水準を左右するものともいえます。

元請・下請の双方が自らの役割を正しく認識し、健全な発注・受注関係を築くことが安全な労働環境の構築につながります。

一つ一つの対応を丁寧に積み重ね、安全衛生活動を支える体制を確実に整えていきましょう。

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