高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し高所安全対策のご提案をしています。
このコラムでは「企業の健康診断の実施義務」についてお伝えしていきます。
ぜひご参考にしていただければと思います。
企業の重要な責務である「健康診断の実施」が労働安全衛生法によって義務付けられています。
もしあなたの勤め先で健康診断が実施されていないとしたら要注意です。
健康診断の実施義務は、事業規模や従業員の雇用形態に関係なく、すべての企業に適用されています。
本記事では労働安全衛生法に定められた健康診断の実施義務に焦点を当て、概要や実施しなかった場合の罰則について詳しく解説します。
企業の人事労務担当者はもちろん、従業員の方にも理解しておいていただきたい重要な情報です。
健康診断の実施義務
労働安全衛生法では、すべての企業に対し、従業員への健康診断の実施を義務付けています。
この義務は企業規模に関係なく適用され、正社員だけでなくパートタイムやアルバイトの従業員も対象になります。
健康診断は従業員の健康状態を把握し、職場環境の改善や健康管理に役立てるために重要な制度です。
一般健康診断の実施時期については以下のように定めています。
健康診断の種類 | 実施時期 |
---|---|
雇用時の健康診断 | 新たに従業員を雇用するとき |
定期健康診断 | 1年に1回以上 |
特定業務従事者の健康診断 | 6か月に1回以上 |
海外派遣労働者の健康診断 | 海外に6か月以上派遣したあとに、国内業務に就かせるとき |
給食従業員の検便 | 新たに雇用するとき、配置替えのとき |
健康診断の対象者
ここまでお伝えしているように、健康診断はすべての従業員が対象となります。
ただし、雇用形態によっては例外もあるので以下をチェックしておきましょう。
正社員・契約社員
正社員は当然ながら健康診断の対象者です。
契約社員については、契約期間が1年以上の場合には健康診断の実施が義務付けられています。
ただし、1週間の労働時間が所定労働時間の4分の3未満の場合は、「常時使用する労働者」とはみなされないため、対象外となります。
派遣社員
派遣社員については派遣先企業との直接の雇用契約がないため、派遣先企業での健康診断の対象とはなりません。
ただし、派遣元企業には派遣社員の健康診断を実施する義務があります。
アルバイト・パート
アルバイトやパートタイム労働者も、健康診断の対象者です。
社員ではないことを理由に健康診断を実施しないことは、労働安全衛生法違反となります。
ただし、以下の➀②に該当しない場合は、実施義務はないとされています。
① 1年以上の長さで雇用契約をしているか、または、雇用期間を全く定めていないか、あるいは既に1年以上引き続いて雇用した実績があること。
② 一週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上であること。
役員
役員の健康診断については、業務内容や勤務形態により対象範囲が異なります。
常勤役員は、一般従業員と同様に定期的な健康診断が必要となります。
一方、非常勤役員や業務執行に関与しない取締役・監査役は、健康診断の対象外です。
役員の健康管理については、それぞれの勤務実態に応じて判断する必要があります。
健康診断の項目
健康診断は、一般健康診断と特殊健康診断の2種類に大別され、それぞれ診断内容が異なります。
一般健康診断は、従業員の基本的な健康状態を把握することを目的としており、特殊健康診断は特定の業務に従事する従業員に対して実施されます。
一般健康診断の項目
一般健康診断では、日常生活や業務に支障をきたすような健康問題がないかを確認します。
以下の11項目があり、異常が発見された場合には精密検査が必要になることもあります。
- 既往歴、業務歴等の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 腹囲、体重、身長、視力、聴力の検査
- 胸部エックス線検査等
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
一般健康診断は、以下の5種類に分けられます。
雇入時健康診断
新たに雇用した従業員に対して、速やかに健康診断を実施する義務があります。
雇い入れ時健康診断は基本的な健康状態を確認し、業務に支障がないかを把握することを目的としています。
定期健康診断
すべての従業員に対して、毎年1回以上の頻度で定期健康診断を実施する必要があります。
従業員の健康状態や変化を把握し、異常の早期発見を目的としています。
特定業務従事者健康診断
危険性や負担の大きい業務に従事する従業員に対しては、特定業務従事者健康診断が義務付けられています。
具体的には、労働安全衛生規則第13条第1項第2号に定められた以下の業務です。
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
※1: 労働安全規則第13条第1項第2号に掲げる業務
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
チ ボイラ 製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに
準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
特定業務に伴う健康リスクを事前に確認し、適切な健康管理を行うことが目的です。
海外派遣労働者健康診断
海外に派遣される従業員に対しては、派遣前の健康診断が必要です。
海外の環境下で起こり得る健康リスクを考慮し、適切な健康管理を行うためです。
派遣先の状況によっては、感染症のリスクなども考慮して、特殊な検査項目が追加される場合があります。
給食従業員の検便
給食従業員は、定期的に検便検査を受ける必要があります。
食品を扱う業務に従事するため、食中毒の予防と衛生管理が重要だからです。
検便により、食材や食事の安全性を確保し、消費者に安心を提供するための措置が取られます。
特殊健康診断の項目
特殊健康診断は、有害な業務に従事する従業員に対して実施されます。
じん肺健診や歯科医師による健康診断など、業種によってそれぞれ特別な検査が行われます。
健康診断を実施しなかった場合の罰則
労働安全衛生法に基づき、企業は従業員に対して健康診断を実施する義務を負っています。
この義務を怠った場合、労働安全衛生法第120条第1項により、50万円以下の罰金が科されることが定められています。
健康診断を実施しないことで、従業員の健康リスクが見過ごされ、深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。
従業員の健康は、企業の持続的な発展の基盤となるため、定期的な健康診断の実施と適切な健康管理が不可欠と言えるでしょう。
まとめ
労働安全衛生法に基づく健康診断の実施は、従業員の健康を守るために欠かせない取り組みです。
企業は基本的に、正社員、パートタイム労働者、契約社員などすべての従業員に対して定期的な健康診断を実施しなければなりません。
一般健康診断や特殊健康診断を通じて、従業員の健康状態を適切に把握し、必要な健康管理を行うことが求められています。
従業員の健康管理を徹底することは、企業の安全性や生産性の向上にも寄与します。
企業は適切に健康診断を実施し、従業員は速やかに受けて健康管理に努めていきましょう。
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