【安全配慮義務とは?労働契約法第5条の内容と企業が取るべき対策】

ひらの

高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し高所安全対策のご提案をしています。
このコラムでは企業が知っておくべき「安全配慮義務」から安全対策を考えてみたいと思います。ぜひご参考にしていただければと思います。

企業が実施する安全対策にはさまざまな取り組みがありますが、根幹にあるのは使用者として果たすべき「安全配慮義務」です。

安全配慮義務違反を争点として訴訟に発展するケースもあり、企業にとって決して軽視できないテーマです。

対応できていない会社はないと思いますが、あらためて自社の状況を見直してみましょう。

本記事では、安全対策の肝ともいえる安全配慮義務について解説します。

目次

安全配慮義務とは

安全配慮義務とは、企業が従業員の生命と健康を守るために配慮すべき義務のことです。

労働契約法第5条に明記されており、違反した場合は損害賠償責任を問われる可能性があります。

労働契約法第5条の条文

労働契約法第5条には「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。

条文に登場する「生命、身体等の安全」には、身体の安全だけでなく精神的な健康(メンタルヘルス)も含まれると解釈されています。

近年ではハラスメントや長時間労働によるメンタル不調についても、安全配慮義務違反として問われるケースが増えています。

労働者を1人でも雇用していれば、企業の規模に関係なく発生する義務です。

判例によって確立された経緯

安全配慮義務の考え方は、労働契約法が制定される以前から裁判所の判例によって認められてきました。

代表的な判例が、最高裁判所昭和50年2月25日判決の陸上自衛隊事件です。

判決で最高裁は、国が自衛官に対して安全配慮義務を負うことを認めました。

その後の川義事件でも、企業が労働者に対して生命・健康を危険から保護する義務を負うことが示されています。

判例の積み重ねを受けて、2008年施行の労働契約法で第5条として明文化されたのが現在の安全配慮義務です。

安全配慮義務の対象範囲

安全配慮義務は、雇用形態を問わず雇用関係にあるすべての労働者に及びます。

正社員はもちろんのこと、契約社員・パートタイマー・アルバイトなど非正規雇用の従業員も対象です。

在宅勤務やテレワークで働く従業員のように勤務場所が自宅であっても義務の対象外にはなりません。

派遣労働者については、雇用契約を結んでいる派遣元が基本的に義務を負いますが、実際の勤務環境をコントロールしている派遣先にも安全配慮義務が生じると解されています。

また、直接の雇用関係がない下請け業者の労働者についても、元請けが作業工程を指示するなど「特別な社会的接触の関係」が認められる場合には、元請け企業が安全配慮義務を負うケースがあります。

安全配慮義務違反となるケース

ここで安全配慮義務違反となる典型的なパターンを見てみましょう。

職場環境の不備による災害

裁判では以下の2点が重点的に審理されます。

  • 危険を予見できたかどうか
  • 被害を回避する措置を取れたかどうか

例えば、安全装置が設置されていない機械を使用させた、足場の点検を怠った、適切な保護具を支給していなかった、といった職場環境の不備が原因で労災が発生した場合は、安全配慮義務違反が問われやすくなります。

労働安全衛生法上の最低基準を満たしていても、予見可能な危険に対して十分な対策を講じていなければ違反と判断される可能性があるのです。

過重労働による健康被害

長時間労働によって従業員が過労死に至ったケースは、企業の安全配慮義務違反が問われる典型例です。

脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前1か月間に100時間、または2〜6か月間の平均で80時間を超える時間外労働が過労死ラインの目安とされています。

労働時間を適切に把握していなかった、健康状態の悪化に気づいていながら業務量を調整しなかった、といった場合は企業側の落ち度が認定されやすくなります。

メンタルヘルスへの対応不足

パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの相談を受けていたにもかかわらず適切な対応を取らず、従業員がうつ病を発症した場合も、安全配慮義務違反となる可能性があります。

ストレスチェックの結果で高ストレス者と判定された従業員に対して、面談や業務調整を行わなかったケースも同様です。

精神的な健康への配慮は身体的な安全と同じく義務の範囲内であるため、兆候を把握していながら放置することは重大なリスクとなります。

違反した場合に企業が負う責任

安全配慮義務違反そのものに対する直接的な刑事罰は、労働契約法には規定されていません。

ただし、違反によって従業員が負傷・発病・死亡した場合、民法上の債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。

特に死亡事案や重い後遺障害が残った事案では、賠償額が数千万円から1億円を超えることもあります。

労働安全衛生法違反に該当する場合は、同法に基づく罰則や行政指導の対象となるほか、企業名の公表によって社会的信用を失うリスクも伴います。

民事・刑事・行政の3つの側面で責任を負う可能性がある点を理解しておく必要があります。

企業が取るべき対策

安全配慮義務を果たすためには、職場環境の整備と従業員の健康管理を両輪で進めることが求められます。

機械設備の定期点検、保護具の適切な支給、危険箇所を継続的に洗い出す仕組みを整えるといった取り組みが基本となります。

健康管理の面では、法定の健康診断の確実な実施に加えて、長時間労働者への医師面談、ストレスチェックの実施と結果に基づく業務調整が重要です。

ハラスメント対策としては、相談窓口の設置と、相談内容に応じて迅速に対応できる体制づくりが欠かせません。

社内規程や安全衛生マニュアルを整備して運用ルールを明文化し、管理職への教育を通じて現場レベルでの実践につなげていくことが、違反リスクを下げる確実な方法です。

まとめ

安全配慮義務とは、企業が働く人の生命と健康を守るために負う義務のことです。

正社員やアルバイトなど、雇用形態を問わずすべての労働者が対象となります。

違反すれば損害賠償責任や社会的信用の失墜といった深刻な影響を受けるため、職場環境の整備・健康管理・ハラスメント対策を体系的に進めましょう。

自社の対応状況の見直しを検討しているのなら、長時間労働の有無と健康診断の実施状況の確認から着手してみてください。

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