
高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し高所安全対策のご提案をしています。
このコラムでは「労災保険」に視点を向けて、安全対策を考えてみたいと思います。
ぜひご参考にしていただければと思います。
高所作業など、墜落や転落といった重大事故のリスクと常に隣り合わせの現場を預かる事業者にとって、安全管理は最優先すべき経営課題です。
しかし、どれほど細心の注意を払っていたとしても、万が一の事態が発生する可能性を完全になくすことはできません。
だからこそ、有事の際にパニックに陥ることなく、事業者として適切な労災保険の手続きを進めるための知識をあらかじめ備えておく必要があります。
初動の誤りは、意図せぬ労災隠しの疑念を招くだけでなく、従業員との信頼関係の破綻や多額の損害賠償といった致命的な事態に繋がりかねません。
本記事では、労災保険の仕組みから、事故発生時に事業主が取るべき手続きの流れまでを解説します。
労災保険とは

労災保険(労働者災害補償保険)は、業務中や通勤中に発生したケガ、病気、障害、あるいは不幸にも死亡事故に至った際、被災した労働者やその遺族に対して必要な給付を行う社会保険制度です。
雇用保険や健康保険のように従業員の給与から保険料を天引きすることは認められておらず、たとえ一人であっても従業員を雇用している場合は、法人の有無や事業規模に関わらず強制的に加入義務が生じます。
また、労災保険は無過失責任の原則に基づいているため、万が一事故の原因が従業員側の不注意にあったとしても、それが業務に関連して発生したものであれば国から補償を受けることができます。
本来であれば事業主が直接負うべき高額な損害賠償リスクを、労災保険が実質的に肩代わりしてくれるという経営防衛策としての側面も持ち合わせていることから、事業主にとっても重要な仕組みでもあります。
労災保険の対象になる災害

労災保険の対象は、大きく分けて業務災害と通勤災害の二つに分類されます。
業務災害
業務災害とは、労働者が業務を原因として被った負傷、疾病、障害、あるいは死亡を指します。
業務遂行性と業務起因性が認められる場合に給付対象となります。
業務遂行性
労働者が事業主の支配・管理下にある状態のことです。
高所作業車への乗り込みといった準備作業や、作業終了後の片付け、さらには現場内での待機時間や休憩時間も含まれます。
例えば、足場の上で作業の再開を待っている際に発生した事故や、現場内の移動中に躓いてケガをした場合も、事業主の管理下にある以上、原則として業務遂行性が認められます。
業務起因性
事故や病気が業務に付随する危険性が現実化したものであるという因果関係のことです。
建設現場や高所作業においては、足場からの転落、積載していた資材の崩落による負傷、あるいは夏場の過酷な環境下で発症する熱中症などが挙げられます。
これらの災害は、その業務に従事していなければ発生し得なかった危険が具現化したものと判断されるため、給付の対象となります。
通勤災害
通勤災害は、自宅から現場へ向かう、あるいは現場から別の現場へ移動するといった合理的な経路上の移動中に発生した事故が対象です。
ただし、移動の途中で私的な用事のために著しく経路を外れた場合は対象外となるため、会社としては日頃から従業員の通勤経路を把握しておく必要があります。
また、元請け会社と下請け会社が混在する建設現場では、原則として元請けの労災保険が適用されるという業界特有のルールも覚えておくべき重要な知識です。
誰が手続きをするのか?

労災保険の給付申請は、法律上の建前では被災した従業員本人が行うことになっています。
しかし、ケガで入院したり療養が必要だったりする従業員に複雑な書類作成を任せるのは現実的ではないため、実際には事業主や総務担当者が書類を代行作成し、労働基準監督署長へ提出する流れが一般的です。
手続きには、会社側が事故を業務上のものと認める事業主の証明印が必要になります。
もし会社側が事故の事実を認めず、証明印の押印を拒否したとしても、従業員は自ら労働基準監督署に相談し、会社側の署名がない状態で申請を強行することが可能です。
労災申請をしないという判断はできるか

実務の現場では、被災者本人が労災申請したくない場合や、会社側が労災申請を拒否したい場合に、申請をしないという判断ができるのでしょうか。
被災者本人が労災申請をしたくない場合
労災申請の手続きがよくわからない、労災を使って会社に嫌がられると困るなどの理由で、従業員が労災申請を望まない場合があるかと思います。
労災の申請をするかどうかは本人が決める権利であるため、本人が給付を請求したくないと固辞する場合は、申請を行わないことは可能です。
ただし、本人が労災給付を使わない場合であっても、会社には労災事故の発生を労働基準監督署長に報告する義務があります。
具体的には、労働者が業務中に被災して4日以上休業した場合には、遅滞なく労働者死傷病報告を提出しなければなりません。
これを行わないことは労災隠しにあたり、厳しく罰せられるリスクがあります。
会社側が労災申請を拒否したい場合
会社側が一方的に労災申請を拒否することはできません。
従業員が労災給付を希望しているにもかかわらず、会社がこれを受け付けなかったり証明印を拒んだりすることは、労働者の権利を侵害する行為です。
前述の通り、従業員は会社の協力がなくても単独で労働基準監督署へ申請を行う権限を持っており、会社が拒否した事実は労働基準監督署による調査の対象となります。
事故を隠蔽しようとしたとみなされれば労働基準法違反や安衛法違反に問われ、結果として会社が受ける損害は、当初労災を適用した場合よりもはるかに深刻なものとなります。
まとめ
不幸にも労災が発生したときは、事業者は速やかに対応をしなければなりません。
現場の安全設備を整えるのと同様に、もしもの時の手続きを理解しておくことは、事業主としての重要な責務です。
不測の事態に備え、日頃から正しい知識を身につけておきましょう。

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