造園業に潜む危険とは?労働災害を防ぐために必要な安全対策

ひらの

高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し高所安全対策のご提案をしています。
このコラムでは「造園業に潜むリスク」に視点を向けて、安全対策を考えてみたいと思います。
ぜひご参考にしていただければと思います。

造園業は、庭や公園の樹木を剪定・伐採し、景観を維持する仕事です。

個人宅の庭で脚立を使って剪定する作業から、高木の伐採、草刈り、さらには機械を用いた大規模な作業まで幅広く含まれます。

一見すると穏やかな仕事に思われがちですが、造園業には重大な事故につながるリスクも潜んでいます。

本記事では、造園業における危険と、安全に作業を行うために心掛けたいポイントを解説します。

目次

造園業ではどんな危険がある?

造園業には、どのような危険が潜んでいるでしょうか。

それを理解するためにまず、造園業の災害事例を見ていきます。

一般社団法人 日本造園組合連合会の死亡災害事例によると、令和5年に23件の死亡事故が発生しています。

主な内訳は以下の通りです。

  • 墜落・転落
  • 激突され
  • 飛来・落下
  • 溺れ
  • アナフィラキシーショック

墜落・転落

造園業で最も多く発生している労働災害が、墜落・転落です。

樹木の剪定や伐採は、脚立や高所作業車を用いて行われることが多く、常にリスクが伴います。

特に剪定ばさみを両手で扱う作業では、不安定になりやすく、バランスを崩す危険があります。

墜落制止用器具が使用されていなかったり、フックを掛ける支持点が確保できなかったりするケースが墜落・転落事故が多発している一因です。

墜落・転落での死亡災害の事例

立木の伐木作業を行うため、被災者は高所作業車に搭乗し、立木の枝打ち等を行っていたところ、地上高さ約10mより墜落し、死亡したもの。

出典:一般社団法人 日本造園組合連合会

激突され

「激突され」とは、物体が人にぶつかって起こる災害のことです。

具体的には斜面での伐採作業で切り倒した立木や枝が滑り落ち、下にいる作業者に当たってしまうなどの事例があります。

特に伐倒木のような重量物が生じる作業では、周囲への注意が欠かせません。

激突によって直接的な被害がなくても、衝撃で転倒や滑落を引き起こし、重大な災害に発展するおそれがあります。

危険木伐採現場において、Y字に分かれている立木を伐採し、分かれた幹の一方の付け根付近をチェンーソーで切断していたところ、当該立木が道路下方に滑ってきて被災者に激突し、5mほど飛ばされ地面に頭部を打ち付けた。

出典:一般社団法人 日本造園組合連合会

飛来・落下

飛来・落下による死亡災害も発生しています。

激突されと似ていますが、こちらは飛んでくる物や落ちてくる物が人に当たる事故です。

伐採作業で倒した木や切り落とした枝が作業者に当たれば、深刻な被害を引き起こします。

立木の伐採作業中、チェーンソーで伐倒していた立木の近くに移動したところ、伐倒木とともに倒れ、頭部に落下して死亡した。

出典:一般社団法人 日本造園組合連合会

溺れ

造園業では、水による死亡事故も起こっています。

造園業で溺死事故が発生するのは、農業用水路や河川に近い現場で除草作業を行うことがあるためです。

足を滑らせたり、暑さで意識が朦朧として水場に落ちてしまうといったケースがよくあります。

特に一人で作業を行う場合に、死亡事故に至りやすくなります。

令和5年にも以下のような事例があります。

被災者が一人で肩掛式刈払機を使用して、法面勾配34度の農業用水路付近の除草作業を行っていたが、その後被災者が見当たらなくなったため捜索したところ、水路内でうつぶせの状態で沈んでいる被災者が発見され、その場で死亡が確認された。刈払機は被災者の肩に掛けられた状態であった。後日、死因は溺死と判明した。

出典:一般社団法人 日本造園組合連合会

アナフィラキシーショック

草刈り作業中は、虫に刺される危険があります。

たかが虫刺されと軽視されがちですが、場合によっては命に関わる重大な事故に発展します。

特に注意が必要なのは、ハチに刺されたことによるアナフィラキシーショックです。

令和5年には、虫刺されが原因となった死亡災害が5件も報告されています。

集合住宅敷地内の植栽剪定及び除草作業中、低木の庭木剪定を行っていたところ、営巣していたハチに手の甲を刺され、アナフィラキシーショックを発症し入院。2週間後に死亡した。

出典:一般社団法人 日本造園組合連合会

造園業での労働災害対策

造園業で起こりうるリスクが明らかになったところで、労働災害を防止するために必要な安全対策を見ていきましょう。

適切な装備

高さ2m以上の高所作業の際は、「墜落制止用器具」の着用が義務付けられています。

ただし樹上作業の場合、樹木をアンカーに利用する場合は強度不足の懸念があります。

そのため、厚生労働省のガイドラインでは、代替措置を取るよう定めています。

具体的には、幹や枝の2か所以上にランヤードを掛けて作業中のワークポジションを確保し、万一の滑落に備える方法です。

例えば以下のような、フルハーネス型墜落制止用器具とワークポジショニングを兼用できる樹上作業専用の製品も販売されています。

ZOENフルハーネスセット

また、虫刺されのリスク低減のために、作業時には長袖や防護手袋を着用するなどが効果的です。

安全教育の周知徹底

労働災害の背景には、安全に対しての理解不足や習慣化の欠如があります。

現場の安全を確保するためには、作業者への継続的な安全教育が欠かせません。

例えば、安全ミーティングや安全衛生教育の定期的な実施、危険予知活動や安全行動を日常の習慣として定着させるなどです。

その際は、脚立・高所作業車を使用する際の墜落防止策、ハチなどの自然環境に起因するリスクへの対応方法を組み込みましょう。

安全点検の実施

造園業に限らず、安全点検が事故防止の基本です。

脚立にガタつきや破損がないか、草刈り機やチェーンソーなどの工具が正常に作動するかを必ず確認しましょう。

安全点検を怠らないだけでも労働災害リスクを大幅に減らせます。

不具合が見つかった場合は速やかに対応し、安全な作業環境を保ちましょう。

まとめ

造園業には、個人宅の樹木剪定から街路樹の管理、大木の伐採まで幅広い作業が含まれます。

脚立を使った剪定作業、虫刺されなど、一見すると危険が少ないと思われるような作業でも死亡事故につながる恐れがあります。

造園業に従事するすべての方が安全を意識し、日々の作業に取り組むことが大切です。

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