ブランコ工法とは？仕組みや安全対策、メリット・デメリットを解説

建物の修繕工事などを行うときに欠かせない足場ですが、狭い敷地や隣接する建物との距離が近い場合など、設置が困難なケースは少なくありません。

そんな時に活躍するのが「ブランコ工法」です。

作業員が建物の屋上からロープで吊り下がって作業を行う光景を、街中で見かけたことがある方もいるでしょう。

見た目のインパクトから危険な作業と感じるかもしれませんが、実際の安全性はどうなのでしょうか？

この記事では、ブランコ工法の仕組みと安全対策について解説します。

ブランコ工法とは

ブランコ工法では、作業員が「ブランコ板」と呼ばれる座具に腰掛け、建物の屋上から垂らしたロープに吊り下がりながら作業を行います。

建物の屋上に設置したアンカーポイントから産業用ロープを垂らし、作業員はハーネスを装着してロープに接続します。

ブランコ工法では安全確保のため、メインロープとライフラインの2本を使用します。

メインロープは体重を支え上下移動を行うためのロープで、ライフラインはメインロープに異常が生じた際のバックアップ(命綱)として機能します。

ロープの昇降には、下降用のディセンダーと上昇用のアッセンダーを使用します。

ブランコ工法での主な作業内容

ブランコ工法でよく行う作業について見てみましょう。

外壁点検作業

外壁の劣化状況を調査する点検作業は、ブランコ工法のメリットを活かせる代表的な作業です。

外壁点検は部分的かつ短期間で終わることが多く、建物全体に足場を組むのは非効率な場合があるからです。

ブランコ工法であれば、必要な箇所へピンポイントで移動しながら効率的に調査を進められます。

補修工事

ブランコ工法では、外壁のクラック補修やシーリング材の打ち替え作業にも対応できます。

足場を組む場合と比べると安定性に欠け、作業の難易度も上がるため熟練した技術が必要ですが、その分、狭い場所での作業や部分的な補修に向いています。

清掃・メンテナンス作業

高層ビルやマンションの窓ガラス清掃などでは、ブランコ工法がよく活用されています。

清掃作業は定期的に実施する必要があるため、その都度足場を組むよりもブランコ工法を活用する方が経済的です。

ブランコ工法の安全管理

ここでは、ブランコ工法の安全管理体制についてお伝えします。

作業員に必要な資格

ブランコ工法などのロープ高所作業に従事するためには、労働安全衛生法に基づく「ロープ高所作業特別教育」の修了が義務付けられています。

オンライン講座や DVD、実技講習（事業所内で実施）などで受講可能です。​

安全なロープ使用法や墜落防止措置、関係法令などを学びます。

使用する安全装備の種類

ブランコ工法での作業には、作業員の安全確保のために以下の安全装備が必須です。

• フルハーネス型墜落制止用器具
• カーンマントル構造の専用ロープ
• カラビナやスリングなどの連結用具
• ヘルメットや手袋などの保護具

安全装備は使用前後の点検が法律で義務付けられており、管理・使用履歴の記録なども求められます。

作業中はメインロープと安全帯の二重系統の確保、緊結元の強度確認、ロープの切断防止措置なども徹底されます。

事故防止のための管理体制

ブランコ工法では、高所作業特有のリスクに対応するため、計画段階から現場作業、緊急時対応まで一貫した管理体制が求められます。

作業計画では現場の状況を調査し、リスクアセスメントを実施します。

作業にあたるときは、必ず複数名でのチーム体制を取り、無線機などの通信機器を使用し、常に連絡が取れる体制を維持します。

作業員の安全意識と技術レベルの維持向上を日々図ることも、事故防止の重要な取り組みです。

ブランコ工法のメリット

ここで、ブランコ工法のメリットについて詳しく見ていきましょう。

コスト削減

足場の設置・解体には多額の費用がかかります。

一方、ブランコ工法ではロープとアンカーポイントの設置のみで作業が可能です。

足場を組む必要がないため、その分のコストを削減できます。

工期の短縮

一般的に足場は、多くの人員が時間をかけて組み立てる必要があります。

しかし、ブランコ工法では準備作業が最小限で済みます。

また、工事完了後の足場解体作業も不要なため、全体の工期を短縮できます。

外観を損なわない

足場を組む際には、周囲にスペースが必要となり、組み立て後は建物の外観も損なわれます。

ブランコ工法であれば建物の外観を損なうことがないため、店舗やオフィスビルなど、営業中の建物でも支障なく作業できます。

ブランコ工法のデメリット

ブランコ工法のデメリットについても見てみましょう。

天候の影響を受けやすい

ブランコ工法は、天候の影響を受けやすい点がデメリットです。

強風時にはロープが大きく揺れるため、作業を中止せざるを得ません。

また、雨天時にも作業が困難になってしまいます。

施工確認が困難

ブランコ工法は足場を組まない無足場工法のため、施工箇所に立ち入って目視確認できません。

そのため、お客様や第三者が施工後の状況を確認するのが難しくなります。

施工確認は、写真や動画による報告に頼らざるを得ないケースが多いでしょう。

作業範囲の制約

作業範囲が広すぎる場合、ブランコ工法は必ずしも経済的とは限りません。

施工範囲が広がるにつれて作業項目や作業員が増え、ロープの設置や安全管理といったブランコ工法特有のコストがかさむためです。

このような場合、作業効率も低下しやすく、足場を設置した方が経済的になることもあります。

実施者の技術レベル

ブランコ工法に従事するには、専門的な技術と経験が必要です。

足場での作業とは異なり、ロープワークや高所での姿勢制御など、特殊な技能が求められます。

十分な技術を持たない作業員が行うと作業品質の低下や、事故リスクが高まります。

まとめ

ブランコ工法は、建物の屋上からロープで吊り下がって作業を行う高所作業技術です。

足場の設置が困難な場所や、コストを抑えたい場合などに有効な工法といえますが、高所作業という性質上、墜落制止用器具などの安全装備は欠かせません。

作業に従事する際は、専門知識と技術を身につけ、安全対策を徹底しましょう。