【豆知識】労働安全衛生上の中高齢者年齢は意外にも若い!?

ひらの

高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し安全対策のご提案をしています。
この記事では「労働安全衛生規則」について解説します!
ぜひご参考にしていただければと思います。

日本では昔から30代、40代は働き盛りだと言われていますが、“労働安全衛生法上ではもっとも働き盛りと言われる「45歳」が中高齢者の分岐ポイントとなっている”ことをご存知でしょうか?

実は、この年齢の区分けは安全対策にも繋がるひとつの折り返し地点とも言えます。

以前のコラムで、【高所作業においての年齢上限は定められていない】というお話をご紹介しましたが、法的に定められていないのはあくまで制限に関する問題であり、全く配慮の必要がないというわけではありません。

この記事では、中高齢者年への配慮について労働安全衛生規則における観点から解説していきます。

目次

安全配慮が必要な労働安全衛生法62条

総務省の資料によると、2023年10月時点の日本の人口分布図は以下のとおりです。

第1次ベビーブーム世代の74~76歳に次いで人口分布が大きいのが、第2次ベビーブーム世代の49~52歳となります。

※我が国の人口ピラミッド:総務省統計局のホームページより抜粋

40代~50代の人口の分布が多いということは、労働人口も同様にこの年齢層の方々が多いことがわかります。

現場仕事に従事している方に限れば、経験が豊富で、技術者として第一線で働くことがもっとも多い年代だと言えるでしょう。

しかし、労働災害防止を目的に定められた労働安全衛生法の第62条には、「中高年齢者等についての配慮」という項目が存在しています。

その内容は、以下のようになっています。

(中高年齢者等についての配慮)
第六十二条 事業者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行なうように努めなければならない。

出典:労働安全衛生法

簡単に言えば、「事業者の人たちは中高年齢者の労働環境においては、心身(精神的、肉体的)の両面から適正な配置をしてくださいね」というものです。

ここで、冒頭の年齢が出てきます。

労働安全衛生法では、45歳以上を中高年齢者と定めています。

つまり、40代後半の経験豊富で働き盛りのベテラン社員であっても、状況によっては配慮が必要になるということです。

では、どのようなケースにおいて事業者は配慮をする必要があるのでしょうか?

45歳以上で心身に何らかの問題を抱えている場合

空を見上げる作業員

対策の主軸となるのは、中高年齢者(45歳以上)の労働者で”特に配慮を必要とするもの”となります。

仕事ができない状態ではないけれど、配慮を受けるべき理由のある方々は必ずいます。

働き盛りだから大丈夫というわけではなく、勤務時間や勤務内容における肉体的な疲労から、心の病(ストレスや心理的負担)など幅広く考える必要があるのです。

例えば、45歳以上の多くの方々は、現在の職を失った場合の再就職の難しさを懸念しています。

こういった心理的なプレッシャーからも、質疑応答などに対しては特に変化がないように振る舞っているものの、実は密かに心理的な負担や肉体的な負担が溜まっているというケースも少なくないのです。

事業者としては、こういった人たちに通常通りの業務をお願いするのは良い判断とは言えません。

なぜなら、このような状態では労働災害のリスクが上昇してしまうことは避けられないからです。

「高年齢者等の雇用の安定に関する法」では55歳以上が高齢者

微妙に法律区分は変わってくるのですが、高齢者等の雇用の安定に関する法という枠組みの中では、55歳以上の労働者を「高齢者」と定義しています。

ちなみに、この数値を2020年の産業別就業年齢割合に当てはめた場合、実に建設業界全体の約35.8%が高齢者という計算になります。

参考:Kind行政書士法人|建設業の現場では高齢者に就業制限が設けられている?

さらに、全体の半分以上、約60%ほどは45歳以上であることもわかります。

  • 15歳~44歳までの合計人数・・・約190万人
  • 45歳~65歳以上までの合計人数・・・約300万人

建設業界は、働き盛りで第一線の年代が多い一方、中高年齢者の割合も非常に高いのが特徴です。

高齢化によって事故などのリスクが上がるのは建設業界に限った話ではありませんが、少なくとも事業者はこれらの数値を把握した上で適切な対処を行っていく必要があると言えるでしょう。

積極的に内部状況の把握と安全管理を

事業者と労働者の間に溝が生まれていたり、不満が大きくなっていたりすると、なかなか本音で話し合う機会は作りにくいかもしれません。

特に小規模事業者では、外部からの人の出入りが少ないためワンマン経営になりやすく、トラブルが表面化しにくいという問題もあります。

ただし現場作業において、致命的な労働災害が発生してしまった場合、最終的に責任を問われるのは間違いなく事業者です。

法律やコンプライアンスの観点からも、労働者の健康状態に加え、安全対策に活かせる改善ポイントにも目を向けることが大切です。

事故が起きてから「あの時、こうしておけば…」と後悔しても、もう遅いのです。

懇親会や打ち合わせの合間を利用して、心身の管理や適切な安全対策に取り組むことで、労働災害を徐々に減らせるかもしれません。

人と人とのコミュニケーションが、時に安全管理にもつながるということを頭の片隅に留めておいていただけると幸いです。

まとめ

今回は、あまり聞き慣れない「中高齢者」という言葉から、特に建設業における労働災害防止の観点でまとめてみました。

「中高齢者=45歳以上」というのは、意外と若いと感じた方も多いのではないでしょうか。

私の周りにも、45歳以上でバリバリと第一線で働いている方はたくさんいます。

むしろ40代後半以上の方の方が、様々な経験や人脈を持っているため、より精力的に結果を出しているという印象があります。

そういう意味では、上記の法律が制定された当時の45歳と現在の45歳では、状況が少し異なるのかもしれません。

しかし、超高齢化社会の日本では、今後ますます中高齢者や高齢者に該当する方が第一線で作業を行う機会が増えてくるでしょう。

そのような状況下でも労働災害を増やさない・減らす・防止するためには、労働環境全体をシステムとして見直す必要があると考えます。

特に労働災害件数で上位を占める「高所事故(墜落・転落)」や「交通事故」については、事業者と作業者がそれぞれ安全対策意識を高く持ち、日々の業務の支障にならないように、安全対策が当たり前になるような働きかけをしていくことが大切だと思います。

作業員

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