親綱の強度はどの程度あれば良い?試験方法や問題になるケースを紹介

ひらの

高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し安全対策のご提案をしています。
この記事では「親綱の強度」について解説します!
ぜひご参考にしていただければと思います。

高所作業の現場では親綱を設置して安全対策をとることが一般的です。

中には親綱を使い慣れていて、なんとなく利用している方もいらっしゃるかもしれません。

しかし「親綱=高所作業時の命綱」です。

作業者の安全性を確保するために、十分な強度を担保する必要があります。

では、どのくらいの強度があれば安心して作業できるのでしょうか。

この記事では親綱の強度の試験方法や強度の基準、親綱を使用する際の使用基準についてわかりやすく解説します。

目次

親綱とは

親綱(イメージ)

そもそも親綱とは、足場工事や建設現場などの高所での作業において、作業従事者が安全帯をかけるために使用するロープのことを言います。

親綱支柱と親綱緊張基と合わせて設置し、フルハーネス型安全帯(墜落制止用器具)などのフックを引っ掛けることで、万が一の墜落・転落による事故が起こらないように使用します。

ナイロンやポリエステルなどの繊維質で作られたものや、ワイヤーを入れて強度を保ったものなどがあります。

親綱の設置方法

親綱そのものの強度が十分だったとしても、設置方法を誤ると意味がありません。

親綱は、親綱緊張器を使用しピンと張った状態にして設置することが大切です。

ハリが緩いと事故などの原因となります。

親綱の1スパンは10m以内とし、1人1スパンで使用するのが原則です。

また複数の人が作業をする場合には、人数分の親綱を設置しなければなりません。

親綱利用時の注意点

親綱を使用するときには、親綱だけでなく親綱支柱の強度も確認する必要があります。

親綱支柱は、落下阻止性能試験を実施して基準を満たしているものを使用します。

親綱の強度が十分でも、支柱の強度が足りなかったら墜落のリスクが高くなるので、親綱と合わせて性能のチェックを徹底しましょう。

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親綱の強度の試験方法と基準

親綱

親綱の強度は、法令によって一定基準の強度を満たさなければならないと定められています。

フックの有無によって試験方法と要求される強度に違いがあるので、それぞれについて詳細を確認しておきましょう。

通常の親綱の場合

フックのない通常の親綱の場合にはロープの伸び試験と強度試験によって安全性を判断します。

初期荷重として0.3kNをかけた上で、親綱に引張荷重をかけて、荷重が7.0kNのときの伸び率をまず測定します。

引張速度は15cm/min~30cm/minです。(1分間に15cm~30cm)

伸び率の計算式は以下の通りで、伸び率が10%以下であれば親綱として問題ないと判断できます。

強度試験については、荷重の最大値が23.0kN以上になっていることが必要とされています。

Check!

力の単位=1kN(キロニュートン)は約100kgf(重量換算)に相当

伸び率=(7kNの引張荷重をかけたときの標点間の長さ-標点間の元の長さ)/標点間の元の長さ

フック付き親綱の場合

フック付き親綱の場合には引張強度試験を実施します。

試験方法は引張用金具にフックをかけて試験機に取り付け、11.5kNの引張荷重をかけます。

この時点でフックや金具等に異常があるかどうかを確認し、破断や変形、損傷などがなく、外れ止めの機能も維持していれば問題ありません。

また、荷重の最大値についても測定し、14.0kN以上であれば親綱として必要な強度があると判定できます。

強度が問題になる親綱の状態

親綱にセミの抜け殻

親綱は試験を実施して強度を確認すれば、基本的に使用して問題はありません。

しかし、法令では以下のいずれかに該当していて強度等の確保が困難な場合には使用しないことと定めています。

強度試験をせずともリスクが高いと判断できる状態なので、具体的に理解をしておきましょう。

ロープに切り傷等の損傷がある

親綱として使用するロープに切り傷などの外的な影響による損傷がある場合には、本来ロープが持っている強度が保たれていません。

微細な傷であれば強度を維持している可能性がありますが、ナイフで少しの切れ目を入れただけでも親綱として十分な強度を保てない場合がほとんどです。

親綱を使用するときには、目視で明らかな傷がないことを確認しましょう。

著しい摩耗又は溶断等の損傷がある

ロープは摩耗していたり、溶断していたりする場合にも強度が低下しているリスクがあるので、親綱として使用するのに適していません。

著しい摩耗の場合には使用しないのが原則となっています。

摩耗も溶断も見た目でわかりやすいのは確かですが、見た目で判断できない場合には試験をして強度を確認するか、新品を使用するのが無難です。

支柱用親綱として使用しているときに落下衝撃を受けた

支柱用親綱として利用している際に、一度落下衝撃を受けた場合には再利用しないのが原則です。

落下衝撃によってロープの見えない部分に損傷が起きているリスクがあります。

試験をして強度に問題がないことがわかれば使用できますが、できれば新しいロープを親綱にした方が良いでしょう。

まとめ

親綱の強度は、足場作業や建設現場などの高所作業時の安全対策として非常に重要です。

法令によって定められている強度を満たしているかどうかをしっかりと確認し、安全に作業できるようにしましょう。

また、親綱の強度に問題がなかったしても安全帯(墜落制止用器具)の強度が不足していれば、万が一の事故が起こるリスクがあります。

安全帯は新規格に対応したものを使用しているかどうか、利用シーンに合った安全帯を選定できているかを確認し、安全性に問題がないか事業者および作業者が判断して作業にあたるようにしましょう。

高所作業時の事故は、生命の危険に直結します。

特に強度が必要とされる設備や器具については、手間や費用を惜しまず、安全性を重視して選定することをおすすめします。

親綱(イメージ)

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