高所作業時の事故を「ゼロ」に!
株式会社G-Place 設備資材事業グループの平野です。
弊社では現場での高所事故を防ぐべく、年間のべ50件以上の現場にお邪魔し高所安全対策のご提案をしています。
このコラムでは「墜落と転落の違い」を知ることで、安全対策の意識付けにつなげていただければと思います。
労働災害には、業種や作業内容によって様々な事故の型があります。
高所作業で起こる労働災害は、ほとんどが墜落(ついらく)と転落(てんらく)です。
この2つはよく似た言葉ですが、違いについてご存知でない方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、墜落と転倒の違いをわかりやすく解説します。
労働安全を考える上で重要なポイントも紹介するので2つの事故の違いを知り、安全意識を高めていきましょう。
墜落と転落の意味の違い
墜落と転落の言葉の意味は、定義によって異なります。
わかりやすく定義されている例を見て具体的なイメージをつかんでみましょう。
辞書での意味の違い
墜落と転落の意味を辞書で見てみます。
例えば、goo辞書で検索すると以下のような意味になっています。
墜落(ついらく)
高いところから落ちること。
goo辞書
転落(てんらく)
goo辞書
- ころげ落ちること。
- 上位から下位に一挙に落ちること。急激に落ちぶれること。
- 墜落すること。身をもちくずすこと。
辞書的な意味を比較すると、転落は墜落の意味も含んでいることがわかります。
ただ、第一義としては転げ落ちることが挙げられていて、単純に高い場所から落ちるときに転落と言うとは限らないことがイメージできるでしょう。
高いところから何にも触れずに落下したときには墜落、急勾配の斜面にぶつかりながら落ちたら転落という解釈ができます。
医学的な意味の違い
医学的な墜落と転落の意味を見ると、2つの言葉の意味を明確に区別できます。
日本救急医学会によると、墜落と転落の意味は以下のようになっています。
墜落(ついらく)
身体が完全に宙に浮いた状態で落下すること
日本救急医学会
転落(てんらく)
階段や坂道などに接しながら落ちること
日本救急医学会
医学的には落下の高さは関係がなく、何にも接触せずに落下したら墜落、何かに接触しながら落ちたら転落になります。
辞書的には墜落は高いところから落ちるとされていますが、医学的には低いところから落ちたとしても墜落や転落になります。
墜落・転落と転倒の違い
医学的には落下距離が関係ないとすると、転落は転倒とあまり変わらないのではと思う人もいるでしょう。
厚生労働省では以下のように転倒を定義しています。
転倒(てんとう)
ほぼ同一平面上で転ぶこと、つまずき、または滑りによって倒れること
厚生労働省
また、転倒の原因と墜落・転落の原因について以下のように区別しています。
転倒の原因 | 墜落・転落の原因 |
---|---|
通路、床面等の上で滑った 段差、突起物、床上を踏み外した | 樹木、建築物、足場、機械、乗り物、梯子、階段、斜面等から落ちた |
つまり、転倒は平坦なところで滑ったり、つまづいたり、踏み外したりしたことによって起こります。
墜落や転落では「落ちる」という表現が使われているので、落差があれば転倒ではなく転落・転倒になると考えられます。
労働安全衛生における墜落と転落の解釈
労働安全衛生規則では第518条に「墜落」の内容が書かれています。
また、墜落の適用範囲と「転落」との関係についても「安衛則第518条及び第519条に関する疑義について」で1976年に解釈がなされています。
労働安全衛生における墜落の意味は、以下の条文から理解可能です。
【労働安全生成規則第518条における墜落】
事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
厚生労働省|労働安全衛生規則
【「安衛則第518条及び第519条に関する疑義について」における転落】
こう配が40度以上の斜面上を転落することは、労働安全衛生規則第518条及び第519条の「墜落」に含まれる。
厚生労働省|労働安全衛生規則
つまり、現行の労働安全衛生法では落下するときに勾配が40度以上なら墜落、40度未満なら墜落と解釈できます。
そして、高さが2メートルあることで墜落と見なされると考えることができます。
墜落と転落を防ぐための安全対策
墜落も転落も怪我を負うリスクが高い事故なので、労働安全を確保するためには対策が必要不可欠です。
2メートル以上の高所で作業をするときには、その場で転倒しただけで墜落や転落を起こすリスクがあります。
墜落と転落には落下のあり方に違いがありますが、安全対策の観点では大きな違いはありません。
高所作業をするときには落下しないようにすることが、なによりも強力な安全対策になります。
この「そもそも落ちないための対策」をレストレイントシステムといい、キャットウォークやハンドレールなどの設置によって墜落・転落が起こりにくい環境に整えます。
万が一落ちてしまった時は「命を守る対策」フォールアレストシステムで、フルハーネスの着用などにより墜落・転落時の衝撃をやわらげます。
まとめ
墜落と転落の違いは、医学的には落下中に何かに接触するかどうかで区別され、辞書も同じような解釈ができる表現になっています。
ただ、労働安全の観点から見ると、高所からの墜落も転落も怪我のリスクが大きい事故であることに違いはありません。
労働安全を確保するためには、そもそも落ちないような対策を取ることと、落ちたときの被害を最小限に抑える対策を取ることが大切です。
墜落も転落も心配することなく働けるように、装備や設備を用意して良好な労働安全衛生対策をしましょう。
弊社は高所作業における安全対策のスペシャリストです。高所安全対策でのお困りごとなどがございましたらぜひお気軽にご連絡ください。
株式会社G-place 設備資材事業グループ
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